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やっつけ・ウァレンティヌスの馬鹿野郎の巻


 むしゃくしゃしてやっつけた。後悔はしている。だが技術と表現力以外の点で反省はしない。
 スラスラと(一気に)書けたのは久し振りだったので、ちょっとだけ嬉しかった。

 バレンタインネタで創想話に一本出そうかと思ったけど、何も思い浮かばなかったので直球勝負に出たのがコレである。どうにも、イベント系には弱いようで……。




別に、特別な日ではない。既に。




「アンタ、チョコレート欲しくない?」
 家に上がるなり、霊夢はいきなりそう言った。
「は……?」
 チョコレート。それが何なのかは、普通に知っている。英語でchocolate、漢字で貯古齢糖(当て字)。カカオの種子を発酵・焙煎したカカオマスを主原料に、これに砂糖、ココアバター、粉乳等を混ぜて練り固めた洋菓子で、(大抵は)甘くて、美味しい(基本的に)。食べた後は歯磨き必須、ガムと一緒に食べればガムが溶ける(食べないけど)。ついでに私はビターが好き。ただし、苦過ぎるのは駄目。あと、()が多いと読み辛いわよね。
「だから、アンタ欲しくないの? 私からのチョコレート!」
 それがどうしたと言うのだろう? ちょっと整理してみようか。
 彼女は私に、「欲しい?」と質問している。つまり、霊夢はチョコレートを所持、または所持に近い状態にあり、それを私に与える意思があると判断出来る。理由は不明だが。
 ……いや。
「……要求は何かしら」
「え……」
「だから、理由は何よ。私に何かをくれるって言うからには、私に何かして欲しいって事ではないのかしら?」
 何かを与えるという事は、渡す側が渡される側に対し、何らかの見返りを要求しているケースが殆どだ。無償で相手に施しを与えるというケースもあるが、相手はケチな霊夢だ。絶対に、リターンを求めてくるに違いない。しかし……。
「残念だけど、それは受け取れないわ」
 生憎、今の私は、金銭も蒐集物にも、持ち合わせの余裕が無い。また、労働を要求されているのだとしたら、残念ながら現在、私はこの家から離れる訳にはいかない状況にある為、やはり霊夢の持ち掛けてきた取引に、応じる事は出来ない。
 霊夢の頼みを断るのは、本当に忍びない。しかし、出来ない事を「出来る」と言って、彼女の信頼を壊すような事をしてしまうよりは遥かに良い。霊夢には嘘を吐きたくないのだ。
「悪いけど、他を当たって……」
 霊夢に深く頭を下げて、私は彼女に謝る事にした。
 今度、埋め合わせはするから……。そう、言い掛けたら。
「…………っ!!」
 霊夢は、何故か。
「ばか……! ばかぁ!」
 黒い瞳を潤ませて、大粒の涙を零していた。
「え、あの? 霊夢?」
 何で泣いてるのかしら……?
 さっきまでの自分の発言や態度、そして可能な限りの範囲で、自分がしたであろう表情の変化を追ってみる。
 発言は……多分、普通だ。霊夢を怒らせるような事は言って無いと思う。罵倒も侮蔑もしていない。
 態度は……。出迎える時には、既に相手が霊夢だと解っていたから、何時もしているようにドアを開けて靴を脱いで貰って、彼女が来訪した事を察知した時に上海達にお湯を沸かさせていたから、少し待って貰えるようにお願いをして、紅茶とお菓子の用意をして……。
「一週間……!」
「え?」
「私の一週間を返しなさいよ! アンタの為に、この一週間、必死に……!」
 一週間も掛けて、霊夢はチョコレートを作ったのだろうか?
「っ……、必死に……! 必死に……。私、頑張った、のにぃ……」
「れ、霊夢……」
 泣きじゃくりながらも私を睨みつけてくる霊夢に、私は申し訳無い気持ちで一杯になった。
 それだけの時間を費やしたのだとすると、きっと霊夢の用事は、かなり重要なものに違いない。そして、そんな重要な用件を私に持ち掛けてきたという事は、彼女は私を信頼してくれた訳で。その信頼を、私は……。
「ごめんなさい……」
 そう言う事しか出来ない自分が情けなかった。
 霊夢の信頼に応えたい。けれど、今の私は動けない。
 どうしよう。ここは無理にでも引き受けるべきだろうか……。でも、霊夢からの頼みを、失敗したくはないし……。
「何を謝ってるのよ、このバカ!」
「ごめん……」
「 うぅ……! ばか、ばかばかばか! 七色莫迦!! お前のかーちゃん魔界神ッ!!」
 いや、まあ、魔界神だけどさ。
「莫迦! 阿呆!すかたん!アンタなんか、 大ッ嫌い!!」
 物凄い剣幕で怒鳴られ、罵倒される。今にも掴み掛かって来そうな勢いだ。霊夢は涙をボロボロと零しながら、何度も何度も大嫌いだと繰り返し、ついにはテーブルに蹲って大声で泣き出してしまった。
 もう、何が何だか解らない……。泣きたいのはこちらの方だ。一体、何がいけないのか。
 彼女の急な態度の変化についていけず、私は困り果ててしまった。
 掛ける言葉が見つからない。けれど霊夢をこのままにしておくのも気が引ける。私は立ち上がり、霊夢の傍に行こうかどうかで、うろうろとし始めた。この自分の行動は、まったく論理的ではない。……なんてくだらない事を考えている場合じゃない。どうすればいいのだろう?霊夢に慰めの言葉を掛けるべきか。謝るべきか。それとも駆け寄って、優しく抱き締めてあげるべきか。
 慰めは……上手い言葉が見つからない。というか、怒られてる私が、彼女をどう慰めれば良いのか。そんな事は第三者がやるべきだ。……第三者に、こんな霊夢は見せたくないな。
 謝るのが一番ではないか? しかし、何が悪いかも自覚せずに謝るのはどうかと思う。知らない事で謝るのは気に入らないし、そんなもの、本当の謝罪にはなりはしない。
 では、抱き締めるのはどうか。先の二つの意見よりは、この状況を打破するのには効果的であろう事は、私と霊夢の関係を顧みれば、考えるまでもない。多分、そうする事でこの問題は、強引に解決出来る筈だ。まことに論理的ではないが、人の情とは論理的ではないから、それはこの場合、捨て置くべきだろう。……想像したら本気で抱き締めてあげたくなってきた。
 そんな事を思った時だった。、何かが床に落ちたような、小さな音が聞こえてきた。小さな、軽い、紙箱が落ちたような音。
 私は霊夢に近付くのを止め、後ろに下がってテーブルの下を覗いてみた。すると、椅子に座る霊夢の足元に、透き通るような水色の、ラッピングされた小さな箱が落ちていた。真紅のリボンが、水色に映えて可愛らしい。大きさも、私の掌をどうにか埋められる程度でしかないのが、可愛さを引き立てている。
 その箱を見て、どうやらこれが、霊夢が私との取引にと、用意した代物……、即ち、チョコレートだろうと悟る。なるほど、取引材料とするだけあり、御洒落で可愛らしい代物だ。私の好みを的確に突いている。流石は霊夢と言った所か……。
 しかし、そう考えると、腑に落ちない点が出てくる。それは、箱の小ささだ。普通、取引材料に食べ物を使うのなら、それなりの量が必要になる筈だ。余程の高級食品で無い限り、ここまで少量では無い筈だ。中身はチョコレートで、チョコレートは品質の差はあれど、取引材料にこの程度の量しか使えず、手に入り難いものとは考え難い。更に、チョコレートは菓子であり、取引に用いるのなら、レアリティに拘らずとも、それなりのものを、然るべき量で収めた菓子折りにするべきである。例えば私が霊夢に、何かと引き換えに用事を頼むのであれば、クッキーか煎餅の詰め合わせを用意する。
 床に落ちているのは、どう見ても「取引用」の品物には見えない。
 では、これは何の為に? 霊夢が、用事も無いのに私に何かをくれるなど……。一体、どういう事なのか。
 泣きじゃくる霊夢を見る。霊夢は肩を震わせながら、ぐすぐすと泣いて、「バカ」だの「嫌い」だのとグチグチ呟いている。本気で言っているのでは無いだろうが、霊夢に「嫌い」と言われるのは、かなり堪えた。
 あまり思案をしている時間は無い。
 このまま悪戯に時を過ごせば、慰める機会も謝る機会も失ってしまう。霊夢に「バカ! アリスなんて知らない! 最低よ、このオタンコナス! お前のかーちゃんアホ毛!」なんて言われて神社に帰られた時には、どうやって機嫌を直して貰うかとか、本当に嫌われたんじゃないだろうか、とかで、毎日を悶々と過ごす破目になりかねない。それは嫌だ。
 何か突破口は無いものか……。
 私は部屋をぐるりと見回した。何かないか……。
 時計、食器棚、上海人形、本棚、1/7八雲紫人形、霊夢と撮った写真(天狗に撮らせた)、小物入れ、造り掛けの1/8輝夜人形(八意永琳注文)、ソファ、マジックアイテムの映像投影機、SFC、コート掛け、カレンダー……。
 カレンダーを見た時、つい、今日の日付を見てしまう。
 2月14日。
「あら……?」
 14日。何か引っ掛かる。何かあったような。
「誕生日……は違うわね。記念日も違う気がする。お祭りは無い筈だし、宴会も無かった筈……」
 霊夢には聞こえないように呟きながら、私はカレンダーと霊夢を交互に眺めた。
 2月14日。14。霊夢。チョコレート。
 そこまで考えた時、漸く私の中で、ある事が思い出された。妄想の中で、エジソンの電球が頭上で燦然と輝いた。
 こんな事を見落としていたとは。
 私は噴き出してしまった。自分の物忘れの酷さと、霊夢の可愛らしさと、そんな彼女に対する、自分の接し方について、苦笑し、自嘲し、微笑んでしまった。
 同時に、霊夢に対する小さな怒りが芽生えた。
 そして、それ以上に。
「ふふ……あはは」
 押さえ切れない程の愛しさが、心の底から込み上げてきた。
「な、何笑ってるのよ!」
 泣き腫らした顔を上げ、霊夢が噛み付きそうな勢いで叫ぶ。
 そんな怒った顔も、愛しくて堪らない。
 そして、許さない。
 まったく、どうしてくれようか!
「ごめんなさい。その、貴女が凄く、可愛く見えて……」
「な……!」
 霊夢は絶句した。次の瞬間、顔を真っ赤にして立ち上がり、猛然と私に掴み掛かって来る。
「私は今、怒ってるのよ!? 鈍感で、莫迦なアンタに!! このニブチン! 七色! へっぽこ魔法遣い!! アンタなんか……」
「アリス」
 言って、私は素早く霊夢の唇に人差し指を当てた。
「アンタ、なんてつれない呼び方はやめてよ。私を呼ぶ時はアリスって呼んで欲しいんだけど? 霊夢」
「あ……う……!」
 真っ赤な顔を、更に真っ赤にしながら霊夢は黙ってしまう。何時だって、二人きりの時は私の方が霊夢より強いのだ。所詮、巫女は二色。その力は私の二割八分六厘にも満たないのだ。
 私は霊夢を、強引に抱き寄せた。
「莫迦なのは、霊夢よ」
 耳元でそっと呟いてやる。霊夢の華奢な身体を自分の身体に密着させて、霊夢の身体の感触を愉味わう。巫女装束越しに感じられる、彼女の柔らかい部分を、同じ場所に重ねて、その感触を愉しんだ。
 腰に回した腕の力を強め、めり込ませるようにお互いの身体を密着させ合う。興奮の為か、または単に身体を密着させた事による、体温の上昇のせいか、鼻腔に感じられる霊夢の匂いに、彼女の汗の臭いが混じる。私はそれを、静かに鼻を鳴らせて吸い込んだ。
「ア、アリス……!」
「そう、それで良いわ」
 顔を赤らめながら、霊夢が私の腕の中で抗議する。もぞもぞと動き、私から逃れようとしているが、そうはいかない。私は更に彼女を抱き締めた。
「イ・ヤ・よ。これはお仕置きなんだから。嫌がっても離さない」
 霊夢の耳に息を吹き掛けながら、私は囁いた。ぴくんと跳ね上がり、甘い嬌声を漏らす霊夢の反応を感じ、頭の中で濃密な、抗い難い欲情が渦巻き始めているのを知覚する。既に身体は、燃えるように熱かった。
「お、お仕置きって……! なん、の……」
「うん……? それはね」
「ふぁ……!?」
 霊夢の首筋に、熱くなった舌を這わせる。何度も、何度も這わせ、舐り、キスをする。
「ば、ばか……! そン、な事、されたらぁ……」
「されたら?」
「ふぁぁ……」
 霊夢の耳朶を軽く噛む。同時に、ふっくらとしたお尻に指を這わせ、スカート越しに、お尻に指を食い込ませた。胸とはまた違う、柔らかな肉の感触が、私を更に煽り立てた。
「そんな……されたら……。怒れ、ない、じゃない……! んぁ……」
「そんな必要は無いのよ。霊夢が私に怒る必要は無いの。そんな事は許可しない……」
 そう、霊夢にそんな権利は無い。今、怒って良いのは私だけだ。霊夢に許されるのは、私を受け入れる事だけだ。
「も、もう……! アリスの……ばかぁ」
 甘ったるい声で、霊夢は身体を震わせた。どうやらスイッチが入ったのか、彼女は積極的に、私に身体を押し付け始めた。私を見る霊夢の瞳は、淫らな期待にしっとりと輝いていた。
「私……なんで、お仕置きされちゃうの……?」
 私の腰に巻かれたリボンに手を回し、それを解こうとしながら霊夢が聞いてくる。
「教えて、欲しい……?」
「うん……。何が、いけなかったの……?」
 欲情に溺れ、蕩け切った瞳で見つめてくる霊夢の問いに、私は努めて優しく微笑んで見せた。
 抑え切れそうにない。
「それはね……」
 霊夢の腰に回した腕を、彼女の上着の中へと滑り込ませる。晒の結び目を探り当てると、それを無造作に解いてしまう。
 言い掛けて、霊夢の顔を見てしまった。
 私を求めてくる、霊夢の顔。狂気に近い、抑え切れない欲情に支配された霊夢の黒い瞳を覗き込んでしまった。
「霊夢!」
「え……?んッ……!」
 私は無我夢中で彼女の唇に、自分の唇を押し付けた。熱い口内に、同じくらいに熱くなった私を突き入れる。霊夢の舌を絡め取り、吸い、舐った。唾液を流し込み、彼女のそれと互いの舌で混ぜ合わせ、出来上がった熱い粘液を分かち合い、嚥下する。ひたすらに霊夢の口内を蹂躙し、犯した。
「──ッ! ──!!」
 霊夢も私の口内に、舌を激しく躍らせてくる。突き出した私の舌を吸い、咥え込んで、何度も何度も唇を重ねた。そして……。
「────!!!」
 声にならない声で喘ぎ、霊夢は身体をぞくりと震わせた。私の身体をそれまで以上に、力一杯抱き締めてくる。そんな彼女を、私もしっかりと抱き締めてやった。
「ア、アリス……」
「まだよ、霊夢。まだまだ……」
 脱力し、小刻みに痙攣する霊夢を抱いて、私はそっと囁いた。


◆◇◆


「で、私が何をしたって言うのよ」
 私のパジャマを来た霊夢が、キッチンでフライパンを操りながら言った。香ばしいベーコンの匂いが鼻をくすぐり、胃袋が空腹感を訴えた。
「知りたい?」
 私は意地の悪そうな声で霊夢に返した。二人分のコーヒーカップを並べ、人形達にパンの焼き加減を見させる。
「言いなさいよー。昨日は、その……聞きそびれちゃったから」
 頬を赤らめながら言う霊夢に愛しさを感じながら、私は意地悪く微笑んで見せた。
「言っても良いけど、霊夢。フライパン落としちゃ嫌よ?」
「そんなヘマするものか」
「ふーん……」
 華麗にフライパン返しを操る霊夢を見て、私はますます意地悪く微笑む。霊夢はそんな私を見て、早く言えと目で催促してくる。
 さて、どうしたものか。

『バレンタインデーのチョコレートを私に渡そうとしたからよ』

 こう言ったら、彼女はきっとむくれる筈だ。一生懸命作ったのに!
 でも、駄目なのだ。一生懸命、手作りのチョコレートを、それも私の好物のビターチョコを用意してくれた事はとても嬉しいのだけど、それでは駄目なのだ。

『だって、それを渡すって事は、まだ私達は恋人同士じゃないって事でしょう?』

 私と霊夢は、既に愛され、愛し合う仲なのだ。互いに恋焦がれ合う恋人同士である。もう、結婚しちゃっても良いくらいだ。……今度言ってみよう。
 兎に角、私と霊夢はそういう仲なのだから、今更「愛の告白」の儀式など、必要無いのである。私には、霊夢が「まだ私とは想いが通じ合っていない」と言って来ているように感じられて、不愉快だったのだ。
「さーて、どうしたものかしらねぇ」
「言いなさいよ、アリス!」
「どーしましょー」
 既に霊夢は完全に自分のものだという認識で、彼女のお茶目な過ちに気付かず、愚鈍でいた自分を省みて、あまり苛め過ぎないようにしようと思いながら、私はコーヒーを注いだ。



おしまい

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